
「アガリクス茸」というキノコはありません
表は、キノコ分類学上でのヒメマツタケ(アガリクス ブラゼイ ムリル)の位置付けを示したものです。この表から見てもわかるように、ハラタケ属(アガリクス)の中にハラタケ、ツクリタケ、モリノハラタケなどと並んでヒメマツタケが入っています。
世界的なキノコの分類学者Singer,R.によれば、ハラタケ属のキノコは日本国内に37種類、北米には200種類以上あることが報告されています。
昨今、広告などでよく目にする「アガリクス」という名前は、ハラタケ属のキノコの総称であって、特定のキノコをさしているわけではありません。また、ハラタケ属のキノコの中に「アガリクス茸」という固有のキノコは存在しません。
さらに、「アガリクス茸」を謳った広告などで、日本癌学会、日本薬理学会や学術誌で研究されたという記事を目にしますが、これらの学会での発表を調査しても「アガリクス茸」というキノコでの研究発表はありません。

ヒメマツタケ(アガリクス ブラゼイ ムリル)は、岩出亥之助博士が自ら設立した岩出菌学研究所のスタッフらによって、1975年に世界で初めて人工栽培に成功しました。
岩出博士が初めてこのキノコを見たとき、ハラタケ属のキノコであることはわかっていましたが、学名がわからず、その後、岩出菌学研究所でこのキノコを育成、本郷次雄博士を通じて、世界的に有名なハラタケ属の分類学者であるハイネマン博士に送り、鑑定してもらった結果、「アガリクス
ブラゼイ ムリル」という学名であることが判明しました。
当時、まったく無名であったこのキノコに、岩出博士は分類学的な和名を「カワリハラタケ」と付けましたが、実用的には「ヒメマツタケ」とすることを決め、『日本菌学会誌(Transactions
of the Mycological Society of Japan)』(23巻544〜545頁、1982年)に掲載されました。その後、日本菌学会でも認められ、1987年には『原色日本新菌類図鑑(1)』(元日本菌類学会会長・今関六也、理学博士・本郷次雄編著、保育社)に、「学名‥アガリクス
ブラゼイ ムリル」「和名‥ヒメマツタケ(一名カワリハラタケ)」として収載されました。
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